Superb Garbages 2

千野純一(chinorin)のはてなダイアリーの続きです。

なぜかDC-DCコンバータ。そしてインダクタ

・AC100Vを扱うとき仮にもしDC-DCコンバータを採用するとしてもその部分はまるごと集積回路にして、あとは受動部品くらいしか置かないよ、って思うんだけど、なぜか延々と何時間もかけてDC-DCコンバータの基礎から色々勉強した。面白かった。面白いことそれ自体が価値であり、勉強はエンタテイメントである。

・最後の方でパワーMOSFETが出てきた。その構造にはDMOSっていう名前がついてるらしいんだけど、これが例のドレイン~ソース間にショットキーバリアダイオードがついてるやつの正体で、ああ、やっとここまできたかと少し感慨深かった次第。

・あれは寄生ダイオードなんですってね。寄生っていうのは「構造上仕方なくできてしまう」くらいの意味なんだけど、寄生って言ってんのに出力電圧の小さいDC-DCコンバータにとってはものすごく有利に働くという。まさにとんちの極みを見た気分でありました。

・まー座学したからってぱぱっと作れるようなもんじゃないので、方針は変わらず。でもDC-DCコンバータの集積回路を扱うにあたっての知識というか、そういうのも少し身についたのではないだろうか。特にインダクタについてちょっと詳しくなった(気がする)のが大きい。

・インダクタはフライホイールに例えるのがびっくりするくらい適切で、「より大きく重いフライホイールは回すのに大きなエネルギーが必要で、回転している大きく重いフライホイールからは大きなエネルギーが取り出せる」のと同様に、「よりインダクタンスの大きいインダクタは電磁誘導させるのに大きなエネルギーが必要で、起電力が発生しているインダクタンスの大きいインダクタからは大きなエネルギーが取り出せる」感じ。回すときにかけるエネルギーの式とかもすごい似てるらしい。

・で、インダクタに電磁誘導が起きると、逆起電力が発生しまーす。ダイオードの「逆回復時間」とかもそうなんだけど、この「逆」っていうのがほんと意味わかんないよね。コンデンサは逆じゃない起電力なんですよ。まあそこだけ説明してみよう。


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コンデンサの場合~。↑こんな回路があったとしよう。

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・↑スイッチをクローズすると電気がこんな感じに、電源のプラスから出てマイナスの方へ向かい、抵抗はほとんど無視してコンデンサが充電されます。コンデンサの電極は、電気がやってくる上側がプラス極、電気が漏れる下側がマイナス極です。

ちなみにコンデンサの中央には絶対に電気が通れない(とみなす)絶縁層がありますが、それでも電子はプラス極の方へ行きたがってマイナス極の絶縁層付近に集まってきます。するとプラス極の絶縁層付近にいる電子に対して(マイナス電荷とマイナス電荷なので)反発力が生じ、それによってコンデンサから飛び出した電子は電源を通ってマイナス極方向へ移動します。それがあたかも漏れているように見える電流の正体であり、電子がマイナス極に集まって「通常よりも電子の数が多くなっている」状態のことを「充電されている」と表現します。電子が多いのは安定した状態ではないので、プラス極へ引き寄せられる力(電圧)がなくなれば、自然と電子の濃度を元通りにしようとして放電が始まります。

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・↑コンデンサに電気が溜まった状態でスイッチをオープンすると、今度はコンデンサが、今までこのブログに書いてきたのと同じ表現をすると「貯めるときにかかっていた電圧と逆方向」に放電しようとします。

・このとき、コンデンサを電源とみなします。上側から電気が出てきて、下側に向かって動くのだから、上がプラス、下がマイナス。充電時の極性と、放電時の極性が同じですよね。


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・もうここまでやったらどんなことが起こるかだいたい想像がつく思うけど、インダクタの場合~。↑同じくこんな回路があるとする。
(12/16追記)この回路はまずい気がする。w 電源付近かインダクタ付近に抵抗をもう1個入れるべきです。交流だったらインダクタ自身が抵抗の役割をするからいいんだけどね。

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・↑スイッチを入れると電気が流れるのはコンデンサと同じです。ただしインダクタはフライホイールよろしく、回すのにその重さ(インダクタンス。単位はH[ヘンリー])なりのエネルギーがいります。つまりエネルギーを貯めるのですが、コンデンサみたいにバーン! と貯まるのではなくて、慣性がはたらく感じ。回り始めはゆっくりです。

・飽和したところでスイッチを切ると電源からの電気は当然遮断されるのですが、インダクタはフライホイールが慣性で回り続けるみたいに電気を放出し続けます。慣性のイメージからわかる通り、元の電気と同じ方向にです。つまり↓こう。

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・このときの電源はインダクタです。電気はインダクタの下側から出て、上側へ流れていますので、下がプラス、上がマイナスです。(便宜的に充電/放電という言葉を使うけど)充電時の極性と、放電時の極性が逆になりました。これが逆起電力(ぎゃくきでんりょく)です。

ちなみにインダクタが起電した電気のエネルギーは抵抗で消費されてやがてなくなります。抵抗を置かずにインダクタの両端を短絡したとしても、短絡経路に必ず抵抗が発生するので徐々に減衰するのは変わりません。が、理想的な回路ではインダクタの起電によって永久に電気が流れ続けるのだとか。理想というのは具体的には抵抗ゼロのことです。抵抗ゼロといえばつまり―――実際、超伝導コイルでは永久に電気が流れるという現象が起こります。ロマンだなあ。


・このようにコンデンサの放電が順方向、インダクタの起電が逆方向と定義されているんだけど、なーんか感覚的に反対のような気がしない?? というお話でした。

・インダクタはこのように磁束としてエネルギーを貯め、普通に電気として放電することでそのエネルギーを解放します。つまりコンデンサと似たような働きをするのですが、違う点としては
(1)じわじわ貯まっていっぱいになると電流を普通に通しちゃうこと
(2)放電の方向がコンデンサと逆向きであること
(3)貯まってるときに逆向きの電気を流すのは難しいこと(電気が通りにくいけど通ろうとした電気の分だけ回転が減速する感じ。交流に対してインダクタが抵抗として働くのはこれが理由)
こんな感じですかねえ。とにかく慣性のイメージが大事だと思いました。