Superb Garbages 2

千野純一(chinorin)のはてなダイアリーの続きです。

電子回路の基礎の基礎⑥:JFETとMOSFET~名前に親近感が湧く方は使ってやってもいい~

  • やらないとか言ってたけど、自分の通る道的にやらないわけにはいかなくなったというか、特にJFETは代わりになる素子がなかなか見当たらないので*1 覚えておく価値があると思った次第。


  • FETというのは Field Effect Transistor 電界効果トランジスタのこと。JはJunctionで、JFETは接合型電界効果トランジスタMOSは Metal Oxide Semiconductor 金属酸化膜半導体で、MOSFETは金属酸化膜半導体型電界効果トランジスタということらしいです。ふーん⋯。
  • 読み方は、MOSFET「もすえふいーてぃー」*2 が多数派というのをどこかで見た。「もすえふいーとらんじすた」*3 みたいなのも聞いたことあるけど、「じぇーふぇっと」「もすふぇっと」って読んでしまってもまあ大丈夫みたい。なので俺はそう呼ぶことにしますわ。
  • なお従来のトランジスタは、FETと区別するためにバイポーラトランジスタ*4 と呼ばれることがあります。ちなみにそれに対しFETはユニポーラトランジスタ*5 であるということですがそういうのはもうどうでもいいっしょ。実際の構造とかは他の教科書的なサイトに嫌ってほど書いてある(そして実際の使い方の解説がなかなか始まらない)ので知りたい方はそちらを。


  • そういうことなので、ここではサクサク簡単にいきましょ。
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  • これがJFETです。バイポーラ⋯従来のトランジスタはエミッタ(E)・コレクタ(C)・ベース(C)の3端子でしたが、FETはドレイン(D)・ソース(S)・ゲート(G)という名前に変わります。ゲートがベースの役割です。ちなみにJFETもMOSFETも単一部品としてのパッケージはバイポーラトランジスタと似たような、黒い欠けた円筒に3本足って感じ。
  • で、NPN型/PNP型と同じような感じでFETにもそれぞれ2つの種類があり、Nチャネル/Pチャネルと呼びます。チャネルって言ってますが使う人がチャンネルを選ぶとかじゃなくて、そういう名前がついた2種類の別の部品です。
  • 使い方は、矢印の方向がどうにも納得いかないんですが、NチャネルがPNP型トランジスタ、PチャネルがNPN型トランジスタにそれぞれ似ています。つまりNチャネルのJFETはゲートに0Vとかマイナス電圧とかをかけて電気を引っ張り出すようなやり方をし、PチャネルのJFETは普通にプラスの電圧をかけることで操作する感じです。
  • JFETは非常に特殊な点がふたつあって、ひとつはノーマリークローズであること。何も操作をしない通常状態のときはクローズですよという意味で、クローズというのはスイッチが「閉じている」ってことなんですが、日本語の感覚だとオープン=導通みたいに感じてしまうことがあって非常に混乱します。図をご覧ください。
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    回路上部のスイッチの状態について、左がオープン、右がクローズです。クローズ=スイッチオン=導通です。ノーマリーオンという言い方もたまに見ますがたまにだと思う。
  • つまり何が言いたいかというと、JFETは、普段何もしない状態でドレイン~ソースが導通しているということです。そしてゲートに対し、Pチャネルならプラスの方向、Nチャネルならマイナスの方向に電圧をかけていくとドレイン~ソース間の道がだんだん細く(通れる電流がだんだん少なく)なっていき、やがて遮断(絶縁)します。
  • JFETのもうひとつ特殊な点は⋯⋯もう一度、JFETの回路図記号をご覧ください。
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  • D・S・Gの表示を消したんですが、ほんと怖くないですかこの記号。ゲートは矢印が書いてあるし縦線に対して垂直に入ってくるからわかるにしても、残りの端子、どっちがドレインでどっちがゲートだと思います? しかも回路図記号って基本的に回転とか反転とか自由なんですけど⋯。
  • 答えはどっちでもいいです。これがJFETのおかしな点の2つめ、それぞれの足に固有の名前がついているにも関わらず機能的にはドレインとソースを区別しません。どっちからどっちへ流しても同じように機能します。どうっすかねこれ。自分は単純でわかりやすく好ましいと感じるんですが。
  • なお、電流で操作するバイポーラトランジスタ――例えばhFE(利得)が100のトランジスタのベースに1mAをつっこむとエミッタとかから最大101mAくらい出てくるみたいな――に対し、FET類は電圧で操作します。データシートを見ると、利得的な値が電圧電流比のグラフとして載ってたりします。
  • で⋯⋯JFETってのはもっぱらスイッチに使われるわけですが、これでも一応トランジスタの仲間なわけで、増幅というのができるらしいです。電圧を上げていくと電流量が減っていくのに、増幅?? たぶん反比例的な関係だと思うんですが、それでも増幅って言うんだろうか。全ては謎。きっとJFETの増幅を使うことはないと思うので今のところは考えないようにしています⋯

 推敲してて思いついた。例えばNチャネルならドレインとゲートに5Vの電圧がかかっている状態(それでドレイン~ソース間は遮断されているとしよう)をデフォルトとして、ゲート側に新たな電源を逆方向に挿入すると、その電源の電圧を上げていくに従ってドレイン電流が増していくはずだ。これでJFETにおける増幅ができると思う。
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なるほど、Pチャネルの場合0Vが遮断なのだとすれば、そこから単に電圧を上げていくことで増幅できるのか。矢印の方向の意味はこれなのか?
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ほんとかあ? なんか変だと思ったら、ゲートから電流を吸ってる時点で負荷に電流が流れてるように見えるんだが⋯。ごく少ないから大丈夫とかそういう問題なの? そもそもシンク電源を使うべきではないのかもしれない。やはりJFETの増幅というのは謎だ。


  • で、MOSFET。近年最もよく使われているトランジスタ素子ということなのですが、なんつーか、いろんなのがあるみたいです。ここではとりあえず基本のだけ⋯。
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  • これが一番よく見かけるMOSFETの記号だと思いますたぶん。なんかほんといろいろあんのよ。ゲートが上下どちらかに寄ってたり、ゲートが2本ついてたり、ドレインとソースの間が直線で繋がってて中間にダイオードが書いてあったり、そのダイオードショットキーバリアダイオードだったり。ほとんどJFETと同じなんだけど矢印だけゲートの反対側に書いてあるってのも見たことある。その都度どういうMOSFETなのか調べないと何ともなりません。全部覚えてもしゃーないでしょこれ。
  • 基本的な使い方は、NチャネルがNPN型トランジスタ、PチャネルがPNP型トランジスタに似ています。もう、統一する気とかないんですよねきっと。JFETと逆で、NチャネルのMOSFETはプラス電圧(5Vなど)で操作し、PチャネルのMOSFETはマイナス電圧(0Vなど)で操作します。
    再三示しますがNはNegativeつまりマイナス、PはPositiveつまりプラスのことです。JFETはチャネル名と同じ極の電圧で、MOSFETはチャネル名とは逆の極の電圧で操作する、とボクは覚えました。
  • ノーマリーオープン(通常状態が遮断)なのもバイポーラトランジスタと同じです。ゲートにかかる電圧(というか電位差の絶対値)が大きくなればドレイン~ソース間を通れる電流も増えていくので、こちらはまだ増幅という言葉が当てはまりますね。
  • ドレインとソース関係なんですけど、Nチャネル(プラス電圧の方)は電気をドレインから吸ってソースに吐き出します。ドレインって排水みたいな意味があるのでシンク電源(これも統一する気なかったんだろうか⋯)はこっち方向に、ソースはそのまんまソース電源使うときはこっち方向に繋ぐってイメージが覚えやすいかと思います。
  • で、例によってPチャネル(マイナス電圧の方)は逆です。電気をソースから吸ってドレインに吐き出します。中身の仕組みを知ってればこの言い方が正しいとわかるのかもしれないけど、これについても統一できなかったんでしょうかねえ⋯。

 

  • という。バイポーラトランジスタとJFETとMOSFETで同じ言葉でも少しずつ意味が違ったりしてほんとどういうつもりでこうしたのかと。いい加減にして欲しい。構造から名前をつけないで、機能や使い方から名前をつけるべきだと思います。
  • なお、バイポーラトランジスタではなくFETを使う理由なんですけど、①構造が単純で集積コストが安いこと、②消費電力が圧倒的に少ないこと(ゲートに電圧をかけたときに流れる電流がμA*6 とかのオーダーらしい)、③反応速度が速いこと だそうです。部品としての単価ではFETの方が高く見えるけどな。もちろん、場合によってはバイポーラの方が断然有利というシチュエーションもあるみたいですよ。例えばバイポーラトランジスタの方がノイズに強くノイズを出しにくいです。
  • で、最後にちゃぶ台を盛大にひっくり返しますが、ノーマリーオープンのJFETや、ノーマリークローズのMOSFETも存在するらしい。また、ドレインとソースを区別するJFETがあるとかなんとか⋯⋯他にも、もしかしたらかける電圧の極が逆のやつとか、ドレインとソースが逆のやつとかもあるのかもしれません。可能性は否定できませんし、何よりFETに関するネーミングについては全く信用できない。別の名前がついてたり◯◯型JFETみたいな特殊なサブタイトル(?)がある場合はわかりやすいですが、別の名前をつけていない場合もあるらしいし(半導体として金属酸化膜を使ってるんだからこれは絶対にMOSFETと呼ぶべきだ、みたいなこと⋯?)。
  • 無限の可能性つったら言い方は綺麗だけど、もう何でもアリなんじゃないですかね。FET類を扱うときは一応気をつけましょう。と言いつつ俺は使うたびに事故を起こす自信があるぞ。
  • どうでもいいことで戸口や裾野を狭めてるとしか思えないんだよなあ。


*1:Hi-Zで導通というと、他にはB接点リレーか、あとはMOSFETの特殊なやつくらいしか思いつかない。B接点フォトカプラの中身ってその特殊なMOSFETだよねたぶん。

*2:元々は、先に発明されたJFETを単に「FET:えふいーてぃー」と呼んでいて、その流れで後に発明されたMOSFETを「もすえふいーてぃー」と呼び、それと区別するためにFETと呼んでいたものを「JFET:じぇーえふいーてぃー」と呼び始めたのではないかと推測する。

*3:たぶんトランジスタの一種であることを強調したかったんじゃないかと思う。

*4:Bipoler:「pole」電極が「bi」2つあるっていう意味。

*5:Unipoler:「pole」電極が「uni」ひとつだけあるっていう意味。使い方とは関係なく、モノ自体がそういう構造になっているということ。

*6:マイクロアンペア:1μA = 0.001mA = 0.000001A