Superb Garbages 2

千野純一(chinorin)のはてなダイアリーの続きです。

電子回路の基礎の基礎①:回路図の基礎

  • 電子回路&マイコン解説シリーズ(そんなやつだったの?)なんですけど、予定を変更してなんか電子回路の基礎の基礎とかを説明してみようかと思いました。厳密な正しさとかは置いといて、全然わかんない人が見て、電気と回路とマイコンのことがなんとなくあるいはざっくりあるいはほんのりわかった気分になれればいいかなくらいの。
  • でも主目的は、何も知らない人でも理解できそうな感じに書くことによって、この界隈について自分の理解をより深めることです。
  • 適当に回路図からやろうか。以前からぜんぶそうなんだけど、このブログに掲載している回路図とかはScheme-itというオンラインツールのスクリーンショットから切り出してます。
  • 「電子回路」と呼べる最低限のものが↓これです。
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  • 左の図は、中学校の技術の授業とかで一応誰もがやったんじゃないかな?(今のカリキュラムは知らんけど)回路左側にある「ニ」を上下逆にしたようなやつが電源(電池)で、長い線で書かれてるプラス極から電気が出て、回路右側にある抵抗を通って電源のマイナス極に戻っていきます。電気は必ずプラス極から出てマイナス極に戻ります。プラスとマイナスの両方を電源に繋がない限り、電気が出てくることはありません。
  • 右の図は、まあだいたい左の図と同じ意味のものです。上のVccってところから電気が出てきて、抵抗を通って、下のGNDってところに吸い込まれて消える⋯⋯とみせかけてGNDは電源のマイナス極に繋ぐことになっているので、この右の図の通りの回路を実際に作ると、見た目的には左の図に似たような感じになるでしょう。つまりこれは電源周辺と横線を省略してスッキリ書くというやり方です。あるいは↓こんな考え方でもいいです。
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    もちろん電池を実際に切断したわけではなく、電池のへそ(?)にこうやって両手の親指をつっこんで内側と外側をひっくり返すと、黒い線の部分が表すのは現実世界の全てで、それ以外の白い部分はぜんぶ電池の内側という想像です。ほら余計わかんなくなった。
  • このように回路図は、だいたい左とか上とかに電源があって、そこから出てきた電気はだいたい右の方とか下の方とかに行って、左下から電源のマイナス極に繋がったり、下の方に消えていく、という形にします。めっちゃ複雑な回路だとこの限りではない(このように書いた方がわかりにくい場合がある)んですが、基本的にはそういうお約束になっています。
  • ちなみに同じ意味の記号でも色々あったりするので、一応なんとなく例示しときます。
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  • まー図面の上の方に書いてあって横線から下に線が出てればだいたい電源(+)です。aaとかddとかはなんか習慣によるものなのでとりあえず違いは認識しなくていいみたいです。5Vっていうのはそのまんま「この電源は5V」って言ってます。1つの回路図に複数の電源が書かれていることもあり、特に指定がなければぜんぶまとめて電源のプラスにくっつけます。
    • ひとつの回路図に「+電源」と「-電源」の両方(と、それとは別にGND)があるという「両電源」「正負電源」(同じ意味です)と呼ばれるものもあります。例えば音(オーディオ)を扱うとよく出てくるやつで、真ん中に線があって波形がその上下に出てるあれを実現する回路なんですが、応用的なので今はこれ以上説明しません。
  • 真ん中のは抵抗の記号のバリエーション。いま大人の人は左のやつになじみがあると思います。しかしヨーロッパ方面とかで普及してるのは右のやつだそうで、実はJIS規格でも20年くらい前から右のが正しいことになってます。これらの記号のそばに単位のない数字が書いてあったらそのまんまΩ(オーム:抵抗値)です。
  • 下の方にあって横線に上から縦線がくっついてて、その下が逆三角とか斜線とかごにょごにょっとしてればだいたいGNDです。厳密には一番左が大地アースと言って地球の地面にくっつける端子、その右がシャーシグランドと言って機械のシャーシ(金属製の外装)にくっつける(どちらも、それによって巡り巡って電源のマイナス極に繋がる)端子なのですが、普段はあんまり区別しません。GNDは、1つの回路図に複数書かれている場合が(電源に比べたら非常に)多いです。実際に回路を組むときはぜんぶまとめて電源のマイナスにくっつけます。
  • まとめ。
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    文脈とかの関係でどうしても①のようにするのがわかりやすい場合とかはそこまでお約束にこだわる必要はありません。まーどんな図でも接続さえ正しけりゃ再現できますしね。④はちょっとびっくりすると思いますがこれも正しいです。
  • えー、まだこんだけしか説明してないのにこんな分量になっちゃうのか⋯。しかもまだ全然面白くないところだし。なんなんだこの文章。

 

  • 豆知識としてもう一点。上では「プラス極から電気が出てくる」という表現をしていますが、実際の物理的な現象としてはまったく逆で、マイナス極から電子というものすごく小さな粒子が出てきます*1。その時点で草しか生えないんですが⋯⋯電子ってのはマイナスの電荷を持っており、マイナス電荷ってのはマイナス極とは反発し、プラス極に引きつけられるという性質があるので、電子は通りやすそうな道(つまり導体:電気の流れやすい物質)を通ってプラス極の方へ移動しようとします。
  • しかし電子は、移動先に空席みたいなのがないと移動できません。なので、もともとそこにいた別の電子をどかして、その席に座ります*2どかされた電子がどうなるかというと、そいつもプラス極の方へ移動しようとして、その先にいる電子をどかして、その席に座ります。この連鎖的な現象は、見方によってはあたかもプラスの電荷を持つ「電気」という仮想的な物質がプラスからマイナスの方へ移動しているかのようにも見えなくもないです*3
  • ⋯というか昔の人にはそう見えたらしく、これらの現象を「電気」っていうよくわかんないビリビリするやつがプラス極から出てきてマイナス極方向へ流れると定義しました。ずいぶん後になって実際に何が起こっているかが判明しましたが、その頃にはもう修正が不可能なほど「電気」の定義が定着してしまっていたということです。様々な理論がその定義を前提として組み立てられており、そこを直すとぜんぶ逆にしなきゃいけなくなって超めんどくさい。なのでそれから今に至るまでずっと、「電気が流れる」方向と電子が移動する方向は逆という気持ち悪い感じになってます。
  • そのような電子の移動がスムーズにいけば何事もないのですが、何らかの理由で抵抗が生じ、電子の動きが遅くなる場合があります。例えば道が狭いと前が詰まって移動しにくくなりますが、後ろにいる電子も移動したがっているため、後ろから押されて前にも進めず、その場でエネルギーが停滞し、余ってしまいます。その余ったエネルギーは居所がなく、熱や光に変わってしまうなど様々な仕事をします。これが電気の正体です。

*1:電気って意外と化学的な現象なので、波動ではなく粒子とみなした方がわかりやすいと思います。

*2:電子は物質のあるところならどこにでもあります。中性子と陽子のカタマリが原子核で、その周りを電子が回っているという図を思い出してください。そこに新たな電子がやってきたとき、前にいた電子が飛び出しやすい物質を導体、安定しまくっていてびくともしない物質を絶縁体、その中間くらいのやつを半導体と呼びます。

*3:「空席」はその場においては相対的にプラスの電荷があるように見える。その後ろ(マイナス極方向)にいたマイナス電荷の電子がその空席にスポッとはまると、(マイナス極方向に)また新たな空席ができる。この連鎖があたかも「プラスの電荷が、マイナス極方向に動いている」ように見えるということ。