・いや、ほんのちょっとしたことなんだけど、こういうちょっとした工夫の積み重ねなんだよなあ、という。
・スライドスイッチというジャンルのパーツがあります。そうだなあ、最近はそこまでよく見かけるってほどでもない気はするんだけど、比較的小型の機器に使われがちで⋯⋯例えばマイク(SM-58とか)の持ち手についてるON/OFFするやつはスライドスイッチだな。あれは平らででっかいけど、もっと小さくてギザギザしてるやつの例はないだろうか⋯。まーとにかくハンドヘルドな機器の横っちょについてるようなやつよ。
・これがけっこう色んな種類があって、ON-ONの単極双投/1極2投/SPDT/1P2T(ぜんぶ意味は同じ。Single Pole, Double Throw)のやつをよく見かける気がするけど、他にも双極双投のものや、双極n投⋯⋯nは12まで売ってるのを見たことがある。極数はたいてい2だ。
・一応説明しておくと、n極m投/nPmTのスライドスイッチというのは、人間が操作するスライド部分がたったひとつあって、それによって操作されるそれぞれ絶縁された回路がn個あり、1回路について入力が1つずつ、選べる出力接点がm個ずつある。回路図上では、↓こんな感じに書けば等価だと理解できる。
左から入力して、右の出力を選ぶ。ダイオード的構造があるわけじゃないので入出力の方向は逆でもいいけど。
・で、電子部品ってのはできるだけ小さく、できるだけ単純な構造にしたいという要求があるものなのね。小さければどんな場所にも実装できてたとえスペースに余裕があったとしても同じパーツを流用できる上に周辺の放熱的にも有利だったり、構造が単純であればたいてい製造コストが安く済んで壊れにくかったりする。操作性とのトレードオフとかもあるけど、スライドスイッチの場合は特に省スペースが重要なんだと思う。それこそがスライドスイッチを使う利点なので。
・そこで、小さく単純な構造で物理的にスイッチングするためにどのような方法を用いればよいか。人間の操作としては、水平に動かして、クリック感のある停止点がいくつか存在するもの。例えば左側にべたっと長い入力電極があって、右側に選択する出力接点がいくつか並んでて、右と左を接続する導体を前後に動かしてどれと接続するか選ぶ⋯⋯って感じでもいいと思うけど、それだと構造が2次元的(動く部分は前後なのに部品は左右に設置する)なので極数が増えるとかなり複雑になってしまうのと、それから構成される部品の種類(べたっと長い電極ってやつが不要)の観点もあるのか、とにかく以下のような構造になっているものが多くみられる。
・今回説明したい構造は、4投が最も複雑で面白いので4投で説明する。冒頭にも置いたこれ。
・丸いのをそれぞれ端子としよう。4投は1入力4出力のはずだが端子は6個あり、スライド面に沿ってまっすぐ並んでいる。上に飛び出てるのが人間が操作する部分で、2つの矢印(とそれを繋ぐ線)が一緒に左右にスライドする。この2つの矢印は導通していて、間いっこあけて2つの接点が繋がる仕組みだ。この状態から3こ分右に動くことができ、全部で4ポジションあることを確認してもらいたい。4投のスライドスイッチの仕組みはこれが全てだ。この6つの端子のどれが入力でどれが出力か理解できるだろうか。
・こたえ。真ん中の2つが入力で、外側の4つが出力。2つの入力は内部では短絡してなかったりするので、その場合はスイッチを機器に組み込みたい側の人が短絡させて使う。
・短絡させない特殊な用途もあるかもしれないけどちょっと思いつかないな。ちなみに3投の場合は外側の端子のどちらかがいっこ少ない。2投の場合は合計3端子で、間を1こ飛ばさないで隣り合った端子を2つ導通させる。
・とか言いつつ、5投以上になると2個飛ばす(8端子)のがあまりにも無駄が多いからか、さっき言ったべたっと長い入力電極方式にすることが多いようだ。これにすると、スイッチを動かすたびにこすれる導通部分が多いので、おそらく摩耗による故障が起こる可能性が比較的高いだろうと思う。⋯が、まあやり方次第か。
・っていう。w こういうのをいちいち面白く説明できたら面白いかもね。たぶん今日の文章はいつにも増して本当に誰も読まないだろう。