Superb Garbages 2

千野純一(chinorin)のはてなダイアリーの続きです。

ある経路に流す電流の方向を制御する回路

・これに一般的な名前はあるんだろうか。たまーに必要になるんですわ。まあだいたいコイルに関することなんだけど、コイルって電流を流すと磁場が発生するじゃないですか。電流の方向を逆にすると発生する磁場の極性が逆になるので、ある種のモーターは逆方向に回ったり、ある種のソレノイドは逆方向に動いたり、ある種のラッチングリレー(スイッチ状態が常に保持されていて、変更するときだけ電流が必要なタイプのリレー)はこっち向きがセットであっち向きはリセットっていう仕組みになってたりする。

・今回はそのような、「ある経路(というかコイル)に流す電流の方向を制御する」仕組みの、最も単純と思われる回路、最も定番と思われる回路、それから自力で考えた実用性ありそうなくらいシンプルな回路、計3つ(+α)を紹介する。

・最も単純な形は、いきなり設計として現実的じゃないんだけど、独立した電源を2個使う方法だと思う。下に示す回路は、真ん中にあるスイッチを押すと反時計方向、下方にあるスイッチを押すと時計方向に電流が流れる。同時に押すと壊れる。w

・2つの電源が独立しておらず、1つの電源に1つの経路を順方向に接続したまま同時に逆方向にも接続した場合、このような単純な(SPSTの)スイッチを2個だけだと必ず短絡が発生する。それを解決するにはHブリッジの原理を使って4箇所にスイッチを配置するのが定番とされているみたい。

・それを物理的なスイッチ2個で実現するなら、スイッチ自体に2回路(DPST以上)のものを採用して、こんな感じにする。

・黄色いひとかたまりでDPSTスイッチを構成しており、押すと中にある2つの経路がそれぞれ別個に繋がると考えてほしい。ちなみにこれも、両方のボタンを同時に押すと壊れるな。抵抗はコイルの隣ではなく電源の直後とかに置くべきだ⋯。

・そんでもうひとつ。これは自力で思いついたということを明確に記しておくがw けっこう綺麗な回路ができたので見ておくれよ。

・ボタンを押すと「抵抗のみ」「コイル+抵抗」が並列に繋がり、押すボタンによってコイルに流れる電流の方向が変わるのがわかってもらえるだろうか。2つの抵抗によって必ず分流が起こってコイルに流れる電流はそれなりの値になるのでそこだけ注意。

・なお抵抗がないと壊れるのは当然として、例えばGND直前に1個だけ配置した場合、理論的には分流が起こらずコイル側の電流は0となる。導線の抵抗や接触抵抗などの働きで意外とうまくいくかもしれないけど、インダクタンスによっては立ち上がりにとても時間がかかる可能性はあるかな?

・ご存じの通りスイッチはトランジスタに置き換えることができるわけだけど、Hブリッジで4個使うのめんどくせーじゃん? っていう意味でこれを思いつけて嬉しかったというまあそれだけの、以上ディスクリート縛りでのお話でした。


・IC使うならこれでいけるのが切ない。(三角形はバッファ:入力された論理値と同じ論理値を出力する論理ゲート)

・あ、いや、でもこれは両方のバッファの入力直前にプルダウン*1が必要だ。習慣でパスコン*2も置くだろうし、そこまでするとやっぱりけっこう複雑になるよね。勝った⋯!


・突然だけど詳しくない人にクイズ。バッファというのは入力されたのと同じ論理値を出力する論理ゲート、つまりHIGHが入力されたらHIGHを出力し、LOWが入力されたらLOWを出力します。これはなんのために存在するでしょうか?

*1:プルダウン:10~47kΩ程度のプルダウン抵抗を介してGNDに落とす。

*2:パスコン:バイパスコンデンサのこと。ICの電源端子付近に0.1μFの積層セラミックコンデンサを配置するのはもはやICを使うときのお約束である。コンデンサの色も日本では青と決まっている。欧米は黄色らしい。もし君が大金持ちならフィルムコンデンサを使ってもいい。